誰も帰ってこなかった未来
2025年3月。
夜の静岡駅周辺を少し歩いた。
昼間には気にならない広い道路や、
必要以上に明るい照明が、
夜になると急に別の街みたいに見えてくる。
人影はある。
車も走っている。
けれど、どこか現実感が薄い。
古いSF映画の背景画というか、
1960年代の人たちが想像していた未来都市というか。
少々とってつけたような話になるが、
この日、耳にはベンチャーズの『In Space』が流れていた。
信号は律儀に色を変え続け、
車は途切れることなく走っている。
それなのに、街全体は妙に静かだった。
アルバムの中でも
「He Never Came Back(帰ってこない男)」
が頭に浮かんだ。
あの頃の人たちが想像していた未来は、
案外こういう風景だったのかもしれない。
高層ビルが林立するわけでもなく、
空飛ぶ車が行き交うわけでもない。
それでも十分に未来ではある。
ただ、子供の頃に思い描いていた2025年は、
もう少し賑やかな場所だった気がする。
人々はもっと夜の街を歩き、
駅前には今より人の気配があり、
未来というものは少し華やかなものだと思っていた。
便利にはなった。
けれど思っていたのとは少し違った。
ただ広く、明るく、どこまでも整備された夜の街。 「Moon Child」の光に包まれたような雰囲気もいい。
けれど、この夜の静岡には
「He Never Came Back」のほうが似合う気がした。
誰かが帰ってこないのではない。
子供の頃に思い描いていた未来そのものが、
どこかへ行ったまま
戻ってこなかっただけなのかもしれない。
誰も待ってはいない。
誰も急いでもいない。
ただ静かな未来の夜だけが続いていた。
ラベル: お散歩写真機