2/03/2026

島田市大代のジャンボ干支──午年、アト、1分


   ジャンボ干支を見に行った。
賀正の文字はすでになく、
代わりに立っていたのは「交通安全」の看板だった。
暦の上では、正月をとっくに外れている。
年が明けた、というよりも、
もう明けてしまったあと。
そういう時間帯にだけ残る正月だった。

今回はカーナビを使った。
番地がはっきり分かるようになったこともあるが、
いちばんの理由は、逆光を避けたかったからだ。
縁起物を撮るにしても、
わざわざ顔色の悪い時間を選ぶ必要はない。
急ぐ理由もなく、
前回のように記憶と勘だけで走る気分でもなかった。

更新の早さが売りのはずのカーナビには、
相変わらず「五和駅」と表示される。
けれど実際の標識には「合格駅」とある。
いつまで経っても、両者は歩み寄らない。

県道を進むと、例の案内看板が見えてくる。
近づくにつれて「干支」が「エト」になるのを見て、
以前はひとりで笑った。
さて、今回はどうだろうかと思いながら車を進めると、
いちばん近い看板に、こう書いてあった。

「アト、1分」

……やっぱり、笑ってしまった。
エトの次は、アト。

偶然なのか、意図なのかは分からない。
ただ、この看板を作った人とは、
言葉のどこで引っかかるかが、たぶん似ている。
車を停めたとき、周囲に人の気配はなかった。
前回訪問時の年末に感じたあの賑わいが嘘のようで、
広い場所に干支だけがぽつんと立っている。
「順番待ち」の表示が目に入り、
それにも、やはり笑ってしまった。
待つ人も、追い越す人も、今回は誰もいない。
まずは正面から、干支の馬を見る。
右側の馬だけが目が赤く点滅している。
拝むというより、
こちらの来訪を確認されているような顔つきだった。
正月らしいといえば正月らしいが、
どこか拍子抜けするほど率直でもある。
少し距離を詰めて、望遠に切り替える。
正面では足りなかった理由は、
近づいてみてはっきりした。
藁の一本一本が、
時間の経過をそのまま抱え込んでいる。
背景には電線が入り込む。
正直、邪魔だとは思う。
けれど、避けきれない。
この馬が立っているのは、
祭礼の奥ではなく、生活の延長線上なのだと、
電線がしつこく教えてくる。

逆光を避けた時間帯は正解だった。
藁は影にならず、必要以上に神々しくもならない。
干支が干支として、ちょうどいい温度でそこにいる。
気づけば、馬は二匹いた。
一匹では足りなかったのだろう。
縁起のためというより、
人がそう配置した、その結果として。

今年は午年だという。
年回りの話が、少しだけ外をざわつかせている。

けれど、この場所では、巳年から午年に、
何事もなかったように、順番が回ってきただけだった。

その脇に、もうひとつ藁の像があった。
正月の文脈で考えると、少し場違いだが、
どうやらトランプ大統領を模したものらしい。
正面から見る限り、正直よく分からない。
似ているかと聞かれれば、少し首をかしげたくなる。
ところが、後ろに回った途端、妙に腑に落ちた。
首から背中にかけての線、全体の重心の置き方。
これはもう、トランプというより、
トリンプの社長ではないか、と思った。

何枚か写真を撮り、そろそろ帰ろうかと思った、
そのとき、背後に人の気配がした。

女性が二人、歩いてきて、すれ違いざまに、
「おはようございます」と声をかけてくる。

この場所でその挨拶を受け取るとは思っていなかったので、
少し間を置いて、同じ言葉を返した。
会話はそれで終わり、理由も説明もない。

午年の馬と、背中だけが妙に印象に残る藁の像と、
「アト、1分」という看板と、
順番待ちの必要がなかった朝。

年明けのジャンボ干支は、
だいたい、そんな感じだった。

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