8/24/2025

ホンダラ行進曲──命の通過点で


   休日の午後、家にいても落ち着かなくて、
そのまま外へ出た。公園まで歩き、
空いたベンチに腰をおろす。

風も人も、ただ通り過ぎていく。
その流れの端に、自分もひっそり混ざっている。

最近、ときどき思う。
「生きるって、うまく速度がつかない日があるな」と。
深刻さとは少し違う、
底にうっすら沈む重さだけが残る日だ。

そんなときだった。
背後から、まっすぐな声が届いた。

「献血にご協力お願いしまーす」

街のざわめきのなかで、その声だけが素直に耳に残った。
求められているのは、誰かの血液だ。
けれど、缶チューハイが抜けきっていない
身体では応えられない。
断りながら、申し訳なさと、
どこか懐かしさのようなものが胸をかすめた。

求められても応えられない瞬間。
その、ほんのわずかな
距離みたいなものが、意外と身にしみた。

それでも、あの一声のおかげで、
この街の午後は、すこしだけ軽くなった気がする。

生きるのがだるい日もある。
それでも、そのだるさの奥で、
血はいつものように黙って流れている。
思い出させてくれたあの声に、
遅れてそっと礼を言いたい。

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