6/21/2025

線路は草に覆われても


   久しぶりに──大井川沿いの無人駅へ。

子供の頃を過ごした場所に、
ふと立ち寄った。

観光では届かない、
静かな懐かしさがある。

いまの線路もホームも、
昔とは場所が違っていた。
たしか、道路の拡張工事のときに
付け替えられたのだった。

列車が来なくなって久しく、
線路は草に覆われはじめていた。
それでも、風景はゆっくりと
馴染んでいく気配を見せていた。

あの頃の木造駅舎が、
もし今も残っていたなら──
吊り橋のそばで、
足を止める人の影も
もう少しあったかもしれない。
昔の映画に、
この駅が映っていたことを思い出す。

記憶の中の景色と、
映画の中のそれと、
そして今ここにある風景が、
すこしずつ輪郭を溶かしながら、
ひとつになっていくようだった。

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