5/21/2025

ピンクの看板と毒素と僕──2010年2月21日の日記より


   昨日の街歩きで、ふと胸に引っかかったことがある。
どうにも全身に毒素がたまってきたな、と
薄々感じていたので、
これはもう光でも浴びて流してもらうしかない──
そんな勢いで、友達がやっているエステ店へ向かった。

ところが、入口の小さな表札に
「女性専用」 の白い文字が後づけで貼られていて、
思わず足が止まった。

あれ、僕みたいな男が来ていいのか。

いったんその場を離れて、
近くの公園でケータイを取り出し、
恐る恐る電話してみた。

受話口から聞こえた声は
いつもの調子で、こちらを迎え入れる柔らかさだった。

「僕、男だけど……大丈夫?」

「ああ、あれね。最近ね、
風俗と勘違いして来る男性が多くて」

「まあ、マンションの一室だし。
ピンク色の看板ってのも、誤解を招くのかもね」

「酔った男の二人組が来たときは、本当に怖かったの」

「危ない思いしたんだね」

「間違い電話も多いのよ。『ヌキありますか?』
 とか言われて……
ほんと、気持ち悪くなっちゃう」

「……まったく男という生き物は、ね。
と、いう僕も男なんだけどさ」

そこまで話して、
急にプチッと回線が落ちたような、
不意の停電みたいな気配が訪れたところで
この日の話は終わる。

オチらしいオチもないことは、
書いている僕がいちばん分かっている。

日記はこの先も続いているのだけれど、
さすがに少々、生々しすぎて
ここに置いておくわけにはいかない。

ラベル:

頁のはじめへ