2/11/2025

愛はえらべるPayでは買えない──ベンチに並ぶ背中

 ショッピングモールのトイレ前。
腰を落ち着けるために置かれたベンチには、
だいたい決まった顔ぶれが座っている。

モールに居場所を見つけきれなかった
男子たちの、一時的な待機所だ。

不思議なことに、
誰ひとり眠ってはいない。

みんな同じ姿勢で、
ひたすらスマホを見つめている。

その光景は、
スケッチブックに描き留めたくなるほど
揃いすぎるほど、真剣だ。

まるで、
同じモデルを囲んで
ポーズを写し取っている途中のような、
静かな集中。

それを横目に、ふと思う。

いいな、と。

情熱を注ぐ対象が、
ちゃんと手の中にあるということが。

静岡のオマチ。
信号待ちのあいだに前後左右を見渡すと、
誰もが何かに夢中だ。

画面の向こう側にある何かを、
黙々と追いかけている。

けれど、
誰かそのものに夢中な人は、
思ったより少ない。

愛は、えらべるPayでは買えない。

街が姿を変え、
店が消え、
流行が行き来するように、
考え方も、価値観も、
これからも更新されていくのだろう。

それでも、
愛だけは
アプリの一覧には並ばない。

そうであってほしい、
という気持ちだけは、
まだ手放さずにいたい。

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