2/14/2025

尾崎、今年もまた


   二月も半ばに差しかかるというのに、
今年はまだ──節分の日でさえも、
尾崎豆を食べそびれてしまった。

あの日は、どうにも節分らしさがなかった。
鬼も訪れず、
豆まきの声も聞こえない。

豆を撒かずに年を重ねる。
そんな静かな節目も悪くはないが、
やはりどこか物足りない。

思い出すのは、ちょうど一年前。

二月五日の夜、
突然、雷鳴が落ち、冷たい雨が屋根を叩いた。

あれはもう雨というより、
ちょっとしたお叱りのように思えた。

その日の僕は、
「また尾崎かよ……」と呟きながらも、
年の数だけ豆を数え、口に運んだ。
しかも前々日にも食べていたというのに。

それでも、そんな律儀な自分を
嫌いではなかった。

あれから一年。
今年の空は静かだ。
雷も雨も降ってこない。

けれど不意に、あの香ばしさが
舌のどこかに戻ってくることがある。

記憶は、ときどき味になって
よみがえる。

そうだ。
今年はまだ尾崎を食べていない。

来年こそは──
少しだけ律儀なふりをしてみてもいい。

(文・節分太一)

ラベル:

頁のはじめへ