12/14/2024

年の瀬の浅間神社で


   静岡浅間神社に、
来年の干支を描いた大絵馬が設置されたと静岡新聞で知り、
久しぶりに足を向けてみることにした。
正月の浅間神社は、例年どおりの大混雑だ。
干支絵馬の前には、人、人、人。
初詣の人波に押され、写真どころではなくなる。
だからこそ、まだ静かなうちに、
境内の空気を撮っておきたいと思った。
今年の元日以来の浅間神社である。
静岡市に長く暮らしているものの、
12月31日の深夜にここを訪れたことはない。
新聞に載る、真夜中の押し合いへし合いの
写真を見るたびに、
つい気圧されてしまうのだ。
私の初詣はたいてい元日か2日の朝、
陽が高くなり始める頃が定番である。
今年は馬場町側から参拝したが、
来年は長谷通り側から入ってみようか──
そんなことを考えながら歩いた。
そういえば昔、
SBSの夕方番組で「鳥居の下を車が通り抜けていた」
と驚く県外出身のタレントがいた。
静岡に暮らしていると、案外見慣れた光景なのだけれど。
今年の干支は「昇り龍」──。
レンズを向けながら、
境内を吹き抜ける冬の空気と共に、
一年がまた静かに折り返していくのを感じる。
広角単焦点レンズは、自分が動かなければ構図に入らない。
そのぶん歩数が増え、
画角を身体で覚えられるところがいい。
ズームばかり使っていると、
ついリングを回して済ませてしまい、
歩く距離も、思考も、どこか横着になる。
境内は穏やかだったが、「叶え馬」の前だけは人がいた。
それぞれの願いを胸に、
静かに手を合わせる姿があった。
私はといえば、馬の忙しさをおしはかり、
「願いを叶えてください」ではなく
「写真、撮らせてください」とだけ
心の中で小さくつぶやいた。
(念のため書いておくが、
私は馬上の人間でも、馬並みでもない。
ごく平凡なオトコだ)
撮った一枚には、三人の姿が写り込んでいた。
ひとつの年が終わる前の静けさを壊さないよう、
そっと姿だけ消して画を整えた。
12月31日までの、短い冬の余白がそこにあった。

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