11/19/2024

写真機生活、再起動――人生はレンズ交換式


   数日前、実に久しぶりに、
ファインダー付きのレンズ交換式カメラを手に入れた。
APS-Cサイズの、軽量なボディだ。

三脚ネジ穴には、小さな金具を取り付けた。
右手の小指まで、きちんと収まる。
それだけで、少し安心する。
落下防止というより、
こちらの不安定さを支えてくれているような感触だった。

レンズは、単焦点のパンケーキタイプを選んだ。
ズームは便利だが、電源を入れるたびに
沈胴するあの一拍が、
どうにも性に合わない。
迷っている間に、風景は平気で逃げていく。
スナップには、すぐ応答できる道具のほうがいい。

本音を言えば、浮気などしたくはなかった。
オリンパス――いや、OM SYSTEMが、
ペンFの後継機を出してくれていれば、話は違っただろう。
手持ちのレンズをそのまま使い、
何事もなかったかのように撮り続けていたはずだ。

だが、出る気配はない。
待つ時間にも、いつか限界が来る。

だから舵を切った。
SONYの、小さなファインダー付きモデルへ。

これでようやく、日中の強い陽射しの中でも、
構図を確かめながら撮れる。
背面モニターが鏡のように反射し、露出も勘に頼っていた、
あのもどかしさとは距離を置ける。

以前、島田市の蓬莱橋で撮った日のことを思い出す。
快晴の空の下、画面は白く飛び、
景色はほとんど見えなかった。
それでもシャッターは切った。
だがあれは、「見て撮った」というより、
「当てずっぽうに記録した」に近かった。

老後を見据えた、健全なカメラ生活。
それは単なる趣味の話ではない。

歓楽街で過ごした、曖昧な時間。
お世辞と笑顔に酔い、消えていった紙幣。
そういうヒヒジジイ的散財からは、
もう降りようと決めていた。

今さら若返るわけではない。
ただ、少年のような、曇りのない目線だけは
手放したくなかった。

ニコンも、キヤノンも、富士フイルムも、
店頭で手に取ってみた。
どれもよく出来ている。
だが、どこか重く、大きい。
毎日持ち歩くには、覚悟が要る重さだった。

その点、この小さなボディは違った。
構えよう、ではなく、
一緒に出かけようと思えた。

いまや、ファインダー付きで、
なおかつ気軽に持ち出せる
レンズ交換式カメラは、驚くほど少ない。
スマートフォンが主役となり、
撮ることは発信とほぼ同義になった。

短く、派手で、音楽付きの映像が優先される世界で、
「構えて、見る」という行為は、後景に追いやられている。

それでも、こちらはこちらの流儀でいこうと思う。
立ち止まり、構え、切り取る。
誰に見せるためでもなく、自分のために。

レンズ交換式の人生は、これからだ。
見たいものに合わせて、視点を替える。
無理のない距離で、世界と向き合う。

再起動とは、派手なことではない。
小さなファインダーを覗き直す、
その一瞬のことなのかもしれない。

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