7/24/2024

すき家の昼、ひとりの影

 
   静かな午後だった。
苦手な外食チェーンのひとつ、すき家に入ったのは、
SoftBankの30%クーポンと、暑さのなかで
どうしてもニンニクを補給したかったからだ。

思えば、一年ぶりの再訪になる。
ラーメン店のカウンターで感じるあの「居場所の狭さ」は、
ここでは不思議と薄い。家族連れが多いせいか、
席と席のあいだに適度な距離がある。

がらんとした店内の隅のテーブル席に腰を下ろすと、
壁に囲まれたその小さな領域が、
外食の苦手な自分をそっと守ってくれた。

メニューを見ると、以前はなかった
サラダセットが増えている。
迷った末、シーザーサラダと、夏限定の
「トリプルにんにく牛丼」を選ぶ。
暑いくせに、あえて豚汁をつけた。
少し長めのドライブでたどり着いた知らない町のすき家は、
ほんのささやかな遠出のようで、
空腹と辛さの汗が程よく混ざり合い、
思った以上に良い昼食になった。
店内は最後まで静かで、写真も気兼ねなく撮れた。
ただ、その静けさをふと揺らす出来事があった。

少し離れたテーブルに、年配の男性がひとり。
タッチパネルがあるにもかかわらず、
店員を大きな声で呼び、口頭で注文し、
しばらくするとまた変更を告げる。
それを何度も繰り返している。

視線を向けないようにしていたのに、
ふと目をそらした拍子に、どこか落ち着きの行き場所を
探しているような佇まいだけが心に残った。

なぜか、そういう振る舞いほど周囲にそっと響いてしまう。
人の気配というものは、
いつも思い通りには薄まってくれない。

食後、セルフレジでPayPayを使おうとしたとき、
店員は「ありがとうございました」
と言い終える前に、すっと奥へ姿を消した。

疑っているわけではないのに、
決済を見届けられないままレジの
前に取り残されると、どこか宙ぶらりんになる。

人と関わるのが得意ではない自分ですら、
こういう場面ではひっかかるのだから、
人間というのはつくづく不思議だ。

ふと思う。
ドライブスルー──マクドナルドも、ロッテリアも、
ケンタッキーも、車に乗ったまま注文するあの世界は、
どうしても想像の段階で怖い。
外食のいくつかは克服してきたはずなのに、
そこだけはまだ遠いままだ。

今日のすき家は、誰にも邪魔されない
静かでやわらかな時間だった。
その風景の片隅に、こちらの気配も
また、しずかに溶け込んでいた。

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