パリは遠く、仕立て屋は近くに──未発売フランス映画のこと
私は、動画よりも写真を、漫画よりも活字を好む。
想像の余地が残るほうが、落ち着くからだと思う。
足りない部分を補いながら受け取る。
そのひと手間が、心地いい。
ネットを使い始めたのは、まだ回線が遅く、
写真一枚の表示にも時間がかかっていた頃だ。
自然と、軽いテキストばかりを読んでいた。
画像を見るなら、雑誌のほうが早かった。
やがて定額制になり、
画像も動画も一瞬で開くようになった。
文章を、腰を据えて読める環境が
ようやく整ったのは、その頃からだった。
今では、スマートフォンひとつで
何でも観られる。
私も動画を観ることはある。
ただ、いわゆるYouTuberの配信には、
あまり惹かれない。
代わりに好むのは、紀行や歴史番組、
50〜60年代の音楽や映画の予告編だ。
さて、ここからが本題になる。
1992年公開のフランス映画
『仕立て屋の恋』─。孤独な仕立て屋の男が、
向かいの部屋に住む若い女性を
毎日決まった時間に覗き見る。
明るい話ではない。
だが、犯罪の一歩手前を
どう描いているのかが気になった。
観終えたあと、妙な感動が残った。
軽い気持ちで何人かに勧めたが、
反応は芳しくなかった。
主人公の印象が、
そのまま私の人格に重ねられたのだ。
ある女性とは、それがきっかけで疎遠になった。
今思えば、当時の周囲は
明快なハッピーエンドを好む人が多かったのだろう。
陰影のあるフランス映画は、
受け入れられにくい環境だった。
たまたま、そういう場所にいたのだと思う。
もう一本だけ、触れておきたい。
1967年の作品「パリのめぐり逢い」─。
この映画は、いまだ観ることができていない。
日本では、正式に発売も配信もされていない。
調べていくと、戦争に関わる描写が
問題視されているらしいことが分かった。
YouTubeで該当部分は観られる。
だが、それが配信を妨げるほどのものかどうか、
判断は難しい。
ネットがテレビに近づき、
企業が慎重になるのも理解はできる。
それでも、
知りたいと願う人間に対しては、
そろそろ解禁されてもいいのではないかと思う。
この映画に興味を持った理由は、ただひとつ。
主題曲のメロディが、あまりにも美しかったからだ。
60年代のフランスが、不倫を含んだ大人の関係を
どう描いていたのか。その空気に、触れてみたい。
ラベル: 好きな音楽




