11/20/2023

固定された視線、揺れる風景――Canon PowerShot V10についての覚え書き


   そのカメラは、手に取る前から決まっていた。
Canon PowerShot V10。
発売前の画像だけで、予約を済ませていた。
小さく、丸く、どこか玩具のような佇まい。

GoProの無骨さには馴染めず、
動画撮影にも、さほど興味はなかった。

それでもこのカメラだけは、
なぜか手元に置いておきたかった。

動画に特化した仕様を眺めながら、ふと考えた。
ダッシュボードに固定して、ドライブの記録を残す。
それだけのことだった。

YouTubeを覗いてみても、レビューは自撮りばかりだった。
PowerShot V10を車載カメラとして使う発想は、
検索結果のどこにも見当たらない。
だから、自分で探すしかなかった。
 
この小さなカメラを、走行中でも落ちることなく、
確実に固定する方法を。
 
寸法を紙に書き出し、ダッシュボードに当ててみる。
角度と視野、吸盤の形状。
すべては、まだ見ぬ現物に向けた予習だった。
 
そして、ようやく見つけた。
ポンプ圧着機構付きの吸盤マウント。
 
空気を抜くことで、エンボス加工のある
ダッシュボードにも、
しっかりと食いつく。

赤い棒を押し込むと、
まるで地面に根を張ったように動かない。
 
V10は軽い。それでも、振動や
カーブの遠心力に耐えるには、
この確かさが必要だった。
 
試しに、オリンパスペンも載せてみた。
びくともしない。それだけで、少し気が楽になる。
 
動画は、水平を保つのが難しい。
けれど、残したいのは正しい構図だけではない。
 
その日の気分。車内の空気。
右に傾いた日も、左に流れた日も、

すべてが「その日の記録」だ。

街では、撮らない。
車という殻の中から、ただ風景を見つめる。
誰も語らなかった使い方。
誰も教えてくれなかった固定方法。
 
それを、ようやく自分で見つけた。
そして、静かに記録する。
誰に見せるでもなく、自分だけのドライブを、
Canonの小さなレンズに預けて。

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