10/15/2023

If I Needed Someone(恋をするなら)──美しすぎるコード進行

 YouTubeの画面に、1966年の武道館が映っている。
もちろん、音源は当日のものではない。
ジョージ・ハリスンが観客に手を振る姿もない。
ただ、映像のざらつきだけが鮮烈だった。

「恋をするなら」が流れ出す。
彼は赤いリッケンバッカーの12弦を抱えていた。
いつものカジノではなく、この曲のためだけに
選ばれた楽器。

和音が鳴った瞬間、会場の空気が細かく震える。
乾いたきらめきが広がり、アルペジオは

わずかに変則的な切れ目を持ちながら進んでいく。

コード進行は単純だ。けれど、異様なほど美しい。
退色した時代の色が、むしろフィルターのように
洒落て見えた。

──かつて、その音を真似していた男がいる。
フェンダージャパンのストラトを握り、
カポタストも知らぬまま、
延々とセーハで押さえ込んでいた。
後半には指が疲れ、弦はミュートされ、
12弦の響きには届かず、アンプをいじる手だけが
空しく動いた。

その不器用な記憶のせいで、
いま画面の中のリッケンバッカーは、
やけに遠く、そしてひどく眩しい。

2023年10月15日。
日曜の午後、アフタヌーンティーの横で流れていた
小さな映像。
それだけで十分だった。

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