8/20/2023

銀次郎と、ぶためしの午後


   まず、丼が運ばれてくる。
肉増しの姿は妙に威風堂々としていて、
しばらく眺めていたくなる。

スープを蓮華ですくう。穴の空いていない方で。
当たり前のことなのに、なぜか一度、確認したくなる。

最初は何も足さない。すっぴんの一杯を確かめる。
それから卓上の調味料に手が伸びる。順番は決めていない。
胡椒で輪郭が荒くなる。
ゆかりを散らすと、後味がふっと澄む。
意外だが、よく馴染む。
にんにくは三片。
少し欲張った。二片でよかったかもしれない。
その小さな後悔も、この丼の一部だ。

終盤、酢を落として軽くする。
最後まで、気分が少しずつ動く。
そして、ぶためし。
無料の選択肢が並んでいても、迷わずこちらを選ぶ。
残った壺ニラに一味と酢。
小さな丼が、きちんと一品になる。

勘定は1,020円。
安さよりも、「きちんと味わった」という手応えが残る。

この「ただ」を思い出すたび、また行きたくなる。

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