体温と体温計
新型コロナのワクチンを打った。
モデルナ製ということで、
発熱の可能性が高いと事前に聞かされていた。
念のため、体温計を用意する。
オムロンの「けんおんくん」─
測ると、体温はそのまま
スマートフォンに移っていくらしい。
体温というものは、
かつては口にすると妙に生活臭のする数字だった。
「熱がある」「少し高い」
その程度の曖昧さで済まされていたものが、
いまでは測定され、保存され、
グラフとして端末の中に並んでいく。
便利だと思う反面、少し行き過ぎている気もする。
身体の内側が、本人の感覚より先に整理されてしまう。
注射そのものの痛みは、ほとんどなかった。
翌日になって、腕が重たくなる。
試しに測ってみると、たしかに数字は上がっていた。
ただし、そこまでだった。それ以上は動かない。
身体が警告を発している一方で、
数字は驚くほど冷静で、
そこに余計な感情は入り込まない。
二回目はどうだろう。
数字は別の振る舞いを見せるのか。
それとも、今回と同じように、
淡々と記録されるだけなのか。
「けんおんくん」の面白いところは、
測定で終わらない点にある。
体温は、そのままiPhoneのヘルスケアに反映され、
日々の変化が一本の線になる。
私の身体は、私が意識するよりも先に、
時系列として並べ替えられていく。
今日の数値は、36.3℃。
平熱という言葉には、安心よりも先に、
静けさが含まれている気がした。
ラベル: 長い文章

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