血は少し油っぽくなっただろう
かつて、ラーメンは苦手だった。
麺がのびる前に食べねばならず、
ゆっくり会話を楽しむ余裕がない。
そのせわしなさが、どうにも性に合わなかった。
だが、友達がいなくなってしまえば話は別だ。
おしゃべりの相手がいなければ、
時間を気にせず、ひとりで食べるしかない。
そうなると、ラーメンは案外都合がいい。
そんな流れで、
このところすっかりラーメンの人になってしまった。
ある日、ふと入った家系の店がある。
小ぢんまりした店内は、二度訪れたが、
どちらもほぼ満席だった。
チェーン店らしいが、それはもう
気にする理由にならなかった。十四日に食べたのは、豚骨味噌ラーメン。七百円。
スマートフォンを使えば早いのだが、
わざわざトートからオリンパス・ペンを取り出して撮る。
狭いカウンターで、少し無理な姿勢になりながら。
この店には、スープを飲み干すと
「まくり証明書」なる紙片をくれる仕組みがある。
身体によくないな、と思う。
それでも、結局は飲み干してしまった。
きっと、血は少し油っぽくなっただろう。そして十九日、また同じ暖簾をくぐっていた。
その日は味玉ラーメン。八百円。
前回よりも幾分あっさりしていて、
苦労せずにスープを空にした。
罪悪感よりも、満腹の余韻のほうが残った。
気づけば、まくり証明書は二枚になっていた。
また近いうちに、一杯すすりに行くのだろう。
ラベル: 食通風気取り



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