宇津ノ谷集落と大正のトンネルめぐり
朝晩の空気だけが、かろうじて季節の移ろいを
知らせていた。
それでも日中の陽射しは、十月半ばとは思えないほど強く、
外を歩くことそのものを、まだためらわせる
力を残している。
しばらく、カメラを持って歩いていなかった。
久しぶりに外へ出ると、身体の重さが先にやってくる。向かった先は、宇津ノ谷。
以前、明治のトンネルを訪ねたときと同じ場所だ。
旧東海道沿いに残る集落は、観光地というより、
時間の流れから少しだけ外れたような佇まいをしている。
四年ぶりの宇津ノ谷。
平日のせいか、人の気配はほとんどなかった。
観光客の姿も見当たらず、静けさだけが道に落ちている。歩いているうちに、ひとつの変化に気づく。
かつて立ち寄った「お羽織屋」が、閉館していた。
陣羽織を眺め、
戦国の末期に思いを馳せた記憶が、ふとよみがえる。
今回は、建物の外観だけを写真に収めた。
旧東海道だったことを、静かに主張する風景を、
いくつか撮る。
石垣、道のうねり、家々の距離感。
派手さはないが、歩くほどに、感触が積み重なっていく。
少し長く歩いてみたい。
そう思いながらも、この日はマスクを着け、
やや早足で進んだ。
汗は、容赦なく噴き出してくる。集落を抜け、大正のトンネルを目指す。
途中で、ひとつの廃墟に足を止めた。
「かまぶろ 丸子」——
かつては、ニュー銭湯の先駆けだったらしい。
役目を終えた建物は、
語らないまま、時間だけをまとって残っていた。
坂道が続き、山道に入る。
登りはきつく、呼吸も浅くなる。それでも、終点は近い。一キロほど歩いたところで、
四年ぶりに、大正のトンネルと再会した。
入口は相変わらず、
周囲の緑に半ば飲み込まれるように口を開けている。
今回は、トンネルを抜けなかった。
車が、思いのほか速い速度で通り抜けていく。
排気ガスの匂いもあり、無理をする理由はなかった。
静岡市側から数枚だけ撮り、引き返す。再び、明治のトンネルへ。
こちらは、天然の冷気が健在だった。
火照った身体を、ゆっくりと冷ましてくれる。
人工ではない冷たさが、ありがたい。
この日は暑さに気を取られ、撮影枚数は控えめだった。
カメラが本領を発揮するのは、
やはり晩秋から冬にかけてなのだろう。
それでも、シャッターを切らなければ始まらない。
撮らなければ、感覚は鈍っていく。
ラベル: お散歩写真機








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