大江戸捜査網
昨日の未明、耳の奥で
「大江戸捜査網」のテーマが鳴った。
夢の縁に指が触れたような、あの感じだった。
かつて、携帯電話の着メロにしていた時期がある。
音の好みを、少しだけ他人に見せたくなる年頃だった。その旋律のせいか、祖父と縁側に並んで座る情景が
ふっと立ち上がった。
湯上がりの身体をうちわで冷ます。
祖父も同じようにゆっくり仰ぎ、
縁側の端では風鈴がひと声だけ鳴る。
平屋の田の字の家。
障子を開け放つと、夜風が畳に触れて匂いが立つ。
テレビでは桃太郎侍や遠山の金さん。
筋は単純で、悪人は必ずやられる。
子どもでも安心して座っていられる世界だった。
祖父は、ときどき戦争の話をした。
僕には半分も理解できなかったが、
その口調の奥にある沈黙だけは、
幼いながらに感じ取っていた。
あとになって知った。
祖父は空爆を逃げ、焼け跡を歩いた人だった。
縁側でうちわを動かす時間が、
どれほど柔らかいものだったかを、ようやく思う。
家にエアコンはなかった。
風と、うちわと、溶けかけのアイス。
夏はそれだけで足りていた気がする。
いまでも、不穏な空気に触れると、
あの曲が耳の奥で小さく鳴る。
安心、などという言葉より前にある、
静かな手ざわりだけが、そっと戻ってくる。
ラベル: 好きな音楽

