和食さと──島田市の夜に
三月のある日、
夕食の写真がスマートフォンに残っていた。
写りは冴えない。レンズが、すき焼きの
汁で曇っていたのだろう。
その夜は、島田市の「和食さと」ですき焼きの
食べ放題だった。
思えば十数年前、
この店へはほとんど毎週のように通っていた。
静岡市の片隅でひとり暮らしをしていた頃、
まっすぐ帰宅するよりも、島田に住む
友人と食事をする方が気が楽だった。
会社帰り、国道一号を藤枝
方面へ曲がるのが、いつしか習慣になっていた。
「さと」もまた、時代とともに姿を変えていった。
焼酎飲み放題を打ち出した時期もあり、
食事と酒を一緒に楽しむ場所へと舵を切っていた。
静岡で飲めば、どうしても財布が軽くなる。
島田では、二次会の選択肢も多くはない。
だから鍋を囲み、飲み放題を付け、
そのままカラオケに流れれば、
それだけで夜はうまく収まった。
鈍行で島田駅まで行き、歩いて店に向かい、
泊まる場所があれば、なおよかったのだと思う。
地元で飲むことには、少し飽きていた。
なにより、無理がきかなくなっていた。
この日はドライブの途中だった。
だから酒は口にしなかった。
それでも、平気でいられた。
あとになって、あれは「安堵」だったのだと気づいた。
ラベル: 食通風気取り
