プラスティック・ドール
ここ最近、またタイムラインに書き込みを始めた。
去年、十八万円で買った iPhone を手にしてからだ。
「高いだろ」と、誰にともなく笑いながら。
仕事は、人と数字に挟まれる日々。
帰宅するころには、たいてい何も残っていない。
それでも今夜は、画面を開いた。
理由は、ひとつの曲だった。
原田真二の「プラスティック・ドール」─。
流しっぱなしにしていると、
言葉の温度が、少しずつ下がっていく。
冷える、というより、余計な熱が抜けていく感じに近い。
そこから、思考は勝手に昔へずれていく。
女性も、男性も、だんだん苦手になったこと。
かつて恋人はいたが、
いつも何かを差し出す側にはなれなかったこと。
化粧を落とした彼女の顔を見たとき、
自分の中で勝手に作っていた像が、
音を立てずに崩れた。
それが信頼の証だと、頭ではわかっていたのに、
その落差を引き受ける覚悟が、
自分にはなかった。
「騙されたままでいい」
そんな言葉を冗談の形で口にしながら、
本当は、最初から信じきる気がなかったのだと思う。
三連休の人には「楽しんで」と書き、
休みのない人には「まあ、金は入るし」と書く。
同じ調子で、同じ距離感で。
焼津で過ごした数年を思い出す。
たいして働いていなくても、
生活だけは成立していた頃。
今は、泡の抜けたビールみたいな毎日だ。
濁りはないが、喉は潤わない。
画面に短く「おやすみなさい」と打ち、送信する。
部屋には、まだ曲が流れている。
音が消える前に、自分がいま、どこにも触れず、
どこからも触れられていないことに気づく。
それでいい夜だと思った。

去年、十八万円で買った iPhone を手にしてからだ。
「高いだろ」と、誰にともなく笑いながら。
仕事は、人と数字に挟まれる日々。
帰宅するころには、たいてい何も残っていない。
それでも今夜は、画面を開いた。
理由は、ひとつの曲だった。
原田真二の「プラスティック・ドール」─。
流しっぱなしにしていると、
言葉の温度が、少しずつ下がっていく。
冷える、というより、余計な熱が抜けていく感じに近い。
そこから、思考は勝手に昔へずれていく。
女性も、男性も、だんだん苦手になったこと。
かつて恋人はいたが、
いつも何かを差し出す側にはなれなかったこと。
化粧を落とした彼女の顔を見たとき、
自分の中で勝手に作っていた像が、
音を立てずに崩れた。
それが信頼の証だと、頭ではわかっていたのに、
その落差を引き受ける覚悟が、
自分にはなかった。
「騙されたままでいい」
そんな言葉を冗談の形で口にしながら、
本当は、最初から信じきる気がなかったのだと思う。
三連休の人には「楽しんで」と書き、
休みのない人には「まあ、金は入るし」と書く。
同じ調子で、同じ距離感で。
焼津で過ごした数年を思い出す。
たいして働いていなくても、
生活だけは成立していた頃。
今は、泡の抜けたビールみたいな毎日だ。
濁りはないが、喉は潤わない。
画面に短く「おやすみなさい」と打ち、送信する。
部屋には、まだ曲が流れている。
音が消える前に、自分がいま、どこにも触れず、
どこからも触れられていないことに気づく。
それでいい夜だと思った。

ラベル: 好きな音楽
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