エコーと断片と、嘘つき女——フェンダーと孤独の耳コピ日記
YouTubeの海を漂っていて、
ふと一本の動画に引っかかった。
ポール・マッカートニーの、あの強情なライン。
長い間の謎が、思いがけない形でほどけていくのを感じた。
思い返せば、呉服町のすみやで
フェンダージャパンのストラトを手に入れた日のことだ。
アンプなど買えるはずもなく、
親父が通販で手に入れたクラリオンの
8トラカラオケ増幅器につなぎ、
マイク端子のエコーだけを目いっぱい効かせて鳴らした。
録音はSONYのテープレコーダー。
ラジオから流れる「Think For Yourself」を拾っては、
巻き戻し、また拾う。
ギターのチューニングも勝手に下げていた。
1965年のビートルズなら、
そんな無茶も平然とやりかねない——
そう信じていた。
そして今日。
リードギターだと疑わずにいた
あの出だしが、ベースだったと静かに知る。
仲間はほとんどいなかった。
音楽理論を口にするのが、
当時はどうしようもなく気恥ずかしかった。
いまなら、こうして好きなだけ学べるのに。
あの頃、もう少しうまく自分を見せられていたら、
誰かが笑いながら
「それ、ベースだよ」と教えてくれただろうか。
そんなことを思う。
いまの自分といえば、
ポールの名前から妙な連想を辿って
ひとりで笑っているような年齢になった。
便利な時代になった。
もう、機材や耳コピで右往左往する必要もない。
次はベースでも買うか——
そんな考えも、ただの懐古の匂いがする。
工夫して再現しようと焦がれる気持ちは、
どこかに置き忘れたままだ。
それでも、あの断片はまだ呼吸している。
エコーの奥で、孤独と音楽と、
都市の薄い記憶が、かすかに響いている。
ラベル: 好きな音楽
