11/06/2015

敗者復活の待合室


   昨日、ポリテクセンターというところで
職業訓練の選考試験を受けた。

十二月から半年、技能を学ぶという名目の講座。
生産システム技術科──
定員十五名に対して応募は九名。
定員割れだというのに、ぼくの番号は七番目だった。

面接は一人十分程度。
だから待ち時間は長くなると覚悟していたが、
結局、九十分ほど椅子に座りつづけた。

じっと動かず、他の受験者と会話もせず、
ときどき偉そうに腕組みをして、少し居眠りもした。
眠気にも飽きた頃、壁に貼られた求人票を眺めてみる。

どの求人にも「年齢」「資格」「実務経験」─。
若い頃、何か一つ手に職をつけておけばよかった──
反省だけはするが、もう遅い。

どこにも、中年の未経験者に向けた優しさはなかった。
それを確認するために、目を凝らしたようなものだ。

ふと、声に出さずにつぶやく。

「勃起二級か……」

当然、そんな資格は存在しない。
だが 「足りない何か」を求められ続ける感覚には、
妙なリアリティがあった。

鞄には、タウンワークやDOMOの求人広告。
離職してから、なぜか捨てられずに持ち歩いている。

「未経験者歓迎」の文字の向こうで、
「即戦力求む」が透けて見える気がする。

歓迎と即戦力が同義語の時代──
いちばん居場所がないのは、中年の新米だ。

十八歳の頃、世の中は売り手市場だった。
上から目線の言葉遣いも、きっとあのころ身についた。
今さら謙虚を演じても、どこか嘘っぽい。

四十年のあいだに、日本は変わった。
そして、ぼくも変わり損ねたまま、中年になった。

雇う側からすれば、こういう人間は
「燃費が悪い」のだろう。
最初は笑顔で迎えてくれても、
数ヶ月後には苛立ちを隠さなくなる。
物覚えが悪く、何を任せても遅い。
正面から「役に立たないね」と言われたこともある。
会社でも、私生活でも。

恋愛も長く続かなかった。
優柔不断で、頼りにならず、甲斐性もない。
見切られて終わった。

いつの間にか、
「役に立たない」と「役に立たせられない」が、
同じ椅子に座っていた。

哀しいのか、滑稽なのか。
自分でもよくわからないし、
もう誰かに説明する気力もない。

人生の折り返しをすぎ、
いまはたぶん、迷い道の真ん中にいる。
進むべき方向も、戻る場所も定まらない。

だけど、こういうものだったのかもしれない。
これまでが計算外で、これからも予定外。
バクチみたいな人生だと、ようやく気づいた。

そのことに腹を立てる元気は、もうない。

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