11/23/2015

ナカナカ見つからない─滅入るサロン


   昨日は、もちろん酒はやめた。
迎え酒なんて、とても無理だ。

飲み会は楽しい──けれど、
そのあとには決まってやってくる。
静かに落ちていくような、あの虚無感。
その鬱々とした時間を、
勝手に「滅入るサロン」と呼んでいる。
……ネイルサロンではない。

こんな時は、このウェブログの
どこかに写真でも貼りつけて、
気を紛らわせるのが一番だ。
写真って、いい。

……でも昨日は、一枚も撮らなかった。
だから貼れない。
気分も晴れない。

青葉シンボルロードでは、
今年もイルミネーションが灯っていた。

来年の十一月、
この灯りを見る頃──
自分はいったい、どこにいるだろう──。

あの世かな、 この世かな──
アレ、違うかな。 
かな、かなっ?
かな、なか、なかなか、 
なかなか見つからない。

仕事も、居場所も。ね。

◆スリー・ファンキーズ『ナカナカ見つからない』
──日本の男性アイドル第一号ともいわれる、あの三人の曲だ。

 追記。
欲望に負けて、
カナナカナカナカダ
死、死なないように。
油断しないように。

今の僕には、
君にご飯を食べさせてあげることが──
できなーーい。

……心に愛がなければ、
どんなに美しい言葉も、
相手の胸に響かなーい。
──性パウロの言葉より。

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11/08/2015

From Russia with Love──そして、便所のほのかな余韻を添えて


   昨日、郵便受けに一枚の封書が落ちていた。

11月5日に受けた、
ポリテクセンター生産システム技術科の選考試験──
結果は、合格だった。

とはいえ、映画のような祝砲も、友人たちの胴上げもない。
そもそも私を宙に放り上げてくれる
腕の持ち主が、今の生活圏には存在しない。

だから、最低限の祝賀を選んだ。
ラジオ体操第一の「跳ぶ運動」を、八回だけ。
わずかに浮く身体に、控えめな実感がにじんだ。

その小さな跳躍だけで、胸の奥に
「最初の門をくぐった」という静かな重さが沈んでくる。

来月からは、見知らぬ教室と、見知らぬ人々。
不確かな未来に足をかけながらも、旅はもう動いている。

税金に支えられた再出発。
その事実の冷たさだけは、石のように心の底に残った。
それでも誠実に生きよう──
そう思い直したくて、
青葉シンボルロードの公衆便所に立ち寄った。

アンモニア臭が容赦なく鼻を刺す。
濡れたタイル、冷えた照明、古びた金属の取手。
人生の節目らしさなど欠片もない、
どこにでもある便所の風景。

その場末の空気の中で、突然、街角から
「From Russia with Love」が低く流れ出した。

ボンドのテーマが、湿った匂いと混ざりあい、
便所の片隅を、わずかに「シーン」のように見せる。
噛み合わない二つの気配が、
滑稽で、そしてどこか救いでもあった。

──From Russia with Love。

人生の節目は、ドラマティックな舞台を選ばない。
むしろ、こうした匂いの残る便所の扉の向こうから、
そっと開けてくることのほうが多い。

その匂いに、ほんのわずかな愛の余韻を添えて。

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11/06/2015

敗者復活の待合室


   昨日、ポリテクセンターというところで
職業訓練の選考試験を受けた。

十二月から半年、技能を学ぶという名目の講座。
生産システム技術科──
定員十五名に対して応募は九名。
定員割れだというのに、ぼくの番号は七番目だった。

面接は一人十分程度。
だから待ち時間は長くなると覚悟していたが、
結局、九十分ほど椅子に座りつづけた。

じっと動かず、他の受験者と会話もせず、
ときどき偉そうに腕組みをして、少し居眠りもした。
眠気にも飽きた頃、壁に貼られた求人票を眺めてみる。

どの求人にも「年齢」「資格」「実務経験」─。
若い頃、何か一つ手に職をつけておけばよかった──
反省だけはするが、もう遅い。

どこにも、中年の未経験者に向けた優しさはなかった。
それを確認するために、目を凝らしたようなものだ。

ふと、声に出さずにつぶやく。

「勃起二級か……」

当然、そんな資格は存在しない。
だが 「足りない何か」を求められ続ける感覚には、
妙なリアリティがあった。

鞄には、タウンワークやDOMOの求人広告。
離職してから、なぜか捨てられずに持ち歩いている。

「未経験者歓迎」の文字の向こうで、
「即戦力求む」が透けて見える気がする。

歓迎と即戦力が同義語の時代──
いちばん居場所がないのは、中年の新米だ。

十八歳の頃、世の中は売り手市場だった。
上から目線の言葉遣いも、きっとあのころ身についた。
今さら謙虚を演じても、どこか嘘っぽい。

四十年のあいだに、日本は変わった。
そして、ぼくも変わり損ねたまま、中年になった。

雇う側からすれば、こういう人間は
「燃費が悪い」のだろう。
最初は笑顔で迎えてくれても、
数ヶ月後には苛立ちを隠さなくなる。
物覚えが悪く、何を任せても遅い。
正面から「役に立たないね」と言われたこともある。
会社でも、私生活でも。

恋愛も長く続かなかった。
優柔不断で、頼りにならず、甲斐性もない。
見切られて終わった。

いつの間にか、
「役に立たない」と「役に立たせられない」が、
同じ椅子に座っていた。

哀しいのか、滑稽なのか。
自分でもよくわからないし、
もう誰かに説明する気力もない。

人生の折り返しをすぎ、
いまはたぶん、迷い道の真ん中にいる。
進むべき方向も、戻る場所も定まらない。

だけど、こういうものだったのかもしれない。
これまでが計算外で、これからも予定外。
バクチみたいな人生だと、ようやく気づいた。

そのことに腹を立てる元気は、もうない。

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