沈黙は苦痛
両替町の夜は、少しだけ他人行儀だ。
先週とは違う男と、今週もまた酒を飲んだ。
半年以上の空白を経て、
旧交を温めるという名目の再会。
友達と呼ぶには距離がありすぎるが、
世間の定義など、僕には関係がない。
別れ際の「では、股」という言葉に、
社交辞令の仮面が、うっすらと透けて見えた。
一人になった僕は、そのあと、
とある店で喋り続けた。
誰かといるとき、沈黙は金ではなく、
ただの苦痛だ。
言葉が、空気のように必要になる。
食事は添え物で、
僕にとっての主菜は会話だ。
昨日は六時間ほど喋っていたことになる。
ミネラルウォーターをチェイサーにしたおかげで、
二日酔いは免れた。
だが、マールボロを一箱空けた代償は大きく、
今日は声が出ない。
喉が枯れても、言葉は枯れない。
たまには黙ればよかったのに、
と反省するふりをして、
僕はまた口を開く。
思い出すのは、岩盤浴での出来事だ。
凛とした静寂の中、
連れの女の子と雑談を続けていた僕に、
見知らぬおじさんが、
「うるさいっ!」と一喝した。
静寂を乱す者としての僕。
沈黙を守れない者としての僕。
それでも僕は、沈黙に耐えられない。
誰かといるとき、
黙り込むことは、途切れることに近い。
だから僕は喋る。
声が枯れても、
言葉が尽きかけても。
都市の夜は、優しい。
沈黙を抱えられない僕のような者にも、
居場所を残してくれる。
両替町のネオンの下、
僕は今日も言葉を探している。
届くかどうかは、
もう、それほど重要ではない。
ラベル: 長い文章

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