3/30/2014

非常識すぎてキラレそう──

──ギャグで登録してみたら通知が鳴った夜

   pairsって、出会い系が流行ってるらしいですよ──
そんな声が、少し遅れて
耳に届いたのは先日のことだった。
その何気ない一言で、自分の世間との
ずれが、またひとつ浮き上がる。

人生そのものがパクチーのように
癖だけ強くて、まともに味わえた試しがない。

そんな自嘲をこぼしながら、ふと思う。
もしかすると自分はパクチーではなく、
博打のほうに近いのかもしれない。
勝ち負け以前に、座っているだけで心臓がざわつくような──
そんな生き方をしてきた気がする。

あるいは、パチンコの等価交換ではなく、
感覚の鈍い一円コーナーを
漂うように歩き、小銭ばかり拾っているような日々。

気がつけば、身近には遠慮なく
蹴りだの小突きだのをくれる女性がいて、
それでも僕は、こうしてスマホを
開くことをやめられずにいる。

出会い系、いや、最近は婚活アプリと呼ぶらしい。
静かに相手を求める空気で、
その雰囲気は昔のテレクラ文化とはまるで違う。

僕といえば、年齢も価値観も、どこかずれている。
顔見知りの女の子たちに至っては、スキどころか
距離を置かれることのほうが多い。

ついこの前も、軽く蹴られた。
握り拳で小突かれた記憶が、胸の奥でまだ少し疼いている。
難易度が高い、というより、単に場違いなのかもしれない。

だから最初は、半分ギャグのつもりで登録してみた。
軽い気持ちで、遊び半分に。

ところが、妙なところにコミュニティ機能があり、
たまたま きゃりーぱみゅぱみゅ好き という
よく分からない共通点で、
会話が転がりはじめる相手がいた。

久しぶりに、iPhoneがピンポンと鳴った。
静まり返った夜の部屋で、画面の光が小さく揺れる。
言葉に飢えていた機械が、
ようやく誰かを捕まえたような気がした。

その中に十九歳の女性がいた。
花の命がどうこう以前に、この不釣り合いな関係が
長く続くとは思っていない。

それでも、いいね の通知が届いた瞬間、
胸の中にわずかに風が通った。
需要は──どうやらゼロではないらしい。

肩をすくめ、苦笑する。
窓の外では、遠くの街灯がぼんやりと光っていた。
蹴られる日々も、スマホの小さな夜も、同じ夜気の中で
ほんの少しだけ柔らかく感じられた。

──きゃりーぱみゅぱみゅの恩恵かもしれない。

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3/16/2014

沈黙は苦痛


   両替町の夜は、少しだけ他人行儀だ。
先週とは違う男と、今週もまた酒を飲んだ。

半年以上の空白を経て、
旧交を温めるという名目の再会。
友達と呼ぶには距離がありすぎるが、
世間の定義など、僕には関係がない。

別れ際の「では、股」という言葉に、
社交辞令の仮面が、うっすらと透けて見えた。

一人になった僕は、そのあと、
とある店で喋り続けた。
誰かといるとき、沈黙は金ではなく、
ただの苦痛だ。

言葉が、空気のように必要になる。
食事は添え物で、
僕にとっての主菜は会話だ。

昨日は六時間ほど喋っていたことになる。
ミネラルウォーターをチェイサーにしたおかげで、
二日酔いは免れた。

だが、マールボロを一箱空けた代償は大きく、
今日は声が出ない。

喉が枯れても、言葉は枯れない。
たまには黙ればよかったのに、
と反省するふりをして、
僕はまた口を開く。

思い出すのは、岩盤浴での出来事だ。
凛とした静寂の中、
連れの女の子と雑談を続けていた僕に、
見知らぬおじさんが、
「うるさいっ!」と一喝した。

静寂を乱す者としての僕。
沈黙を守れない者としての僕。
それでも僕は、沈黙に耐えられない。

誰かといるとき、
黙り込むことは、途切れることに近い。

だから僕は喋る。
声が枯れても、
言葉が尽きかけても。

都市の夜は、優しい。

沈黙を抱えられない僕のような者にも、
居場所を残してくれる。

両替町のネオンの下、
僕は今日も言葉を探している。

届くかどうかは、
もう、それほど重要ではない。

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