8/21/2013

モーレツな暑さと、冷めたココロ


   モーレツな暑さになる――
そんな言葉を、もう何度聞いただろう。

毎夏の決まり文句のように
耳に残りはするけれど、
そのモーレツさが、
期待するほどの快感に変わることはない。

こんな些細で、
どうでもいい個人的な感想を、
こうしてわざわざ書き残しておく。

一昨年あたりから、
僕はドラッグストアに
足しげく通うようになった。

春はアレを求め、
秋はソレを探し、
冬にはコレを……という具合だ。

夏の本命は、制汗剤や冷却スプレー。
昔より暑くなったのか、
それとも僕がだらしなくなったのか。
たぶん、その両方だろう。

ふと気づくと、
ココロのほうはずいぶん冷めている。
それは、僕だけの話でもない気がする。

間抜けでいる余地が、
だんだん減ってきた。
どこかで体裁を気にして、
うっかり羽目を外すことも難しい。

そんなことを考えながら、
僕は今日も汗をぬぐっている。
汗かきなのだ。昔から。

襟足からじんわりと、
火照りが広がる。
だからせめて、
ココロと肉体の温度を
どこかで揃えたいと思った。

そこで手に取ったのが、
小林製薬の「シャツクール」だった。

裏面の説明書きには、
こうある。

「通勤通学前に使用すると、
満員電車や移動中も涼しく
カイテキに過ごせます」

カイテキ。
勝手に快感と読み替えた僕は、
迷わず4本まとめて買った。

青いスプレーに、
ほんの少しの期待を託して。

試してみると、確かに効いた。

湿度65%、気温28度あたりまでなら
ストロングミントの刺激が、
妙にクセになる。

だが、35度を超えた今日、
上半身にはほとんど歯が立たなかった。
腿や腰まわりに吹きつければ、
一瞬だけ涼しい。
だが、それも5分ほどで消える。

消費量だけが、
やけに増えていく。

説明書きを読み返して、
妙に納得した。

「満員電車や移動中も快適」
――人生を変えるとは、
どこにも書いていない。

それでも、
僕は今日も追加で4本を買った。

ほんの一瞬でも、
解放される感じがあるからだ。
つまらない日々に、
短い涼風を差し込むために。

モーレツな暑さと、冷めたココロ。
その狭間で、
僕は今日も小さな工夫を重ねている。

冷ややかさを、どうもありがとう。

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8/17/2013

わりとどうでもいい


   最近のSNSは、
写真と加工でほぼ出来上がっている。
言葉が遊んでいた頃の気配は、
もう遠い昔のものらしい。

タイムラインを流れてくるのは、
飲み物と惣菜と、
それに添えられた短い合図のような言葉。
意味がないわけじゃないけれど、
こちらが何か返す余地もあまりない。

知り合いであればあるほど、反応に困る。

「晩酌なう」と書かれた一枚の写真に、
その先の話は用意されていない。
ただ「今」だけが投げられてくる。

どうやら、
言葉より写真のほうが通じる時代らしい。
気づけば、
戸惑っているのは年寄りの側だった。

正直なところ、
最近のネットには少し疲れている。

それでも、
「割とどうでもいい」という言い回しだけは、
まだ信用している。

強く肯定もしないし、
わざわざ否定もしない。
関わりすぎず、
突き放しすぎない距離。

「いいね!」だけじゃなく、
「よくないね!」も選べる時代が来たとしても、
たぶん僕は、どちらも押さない。

わりとどうでもいい。
そのくらいの温度で、
まだ言葉と付き合っていたい。

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8/14/2013

強さの話


   見るからに手強そうで、
「私は最強です」と年中無休で訴え続ける態度に、
最近は少し疲れてしまった。

はいはい。
わかった、わかった。

そんなふうに、
内心では肩を軽く叩くような顔をして、
画面を閉じてしまう自分がいる。

なぜ、そこまで丁寧に、
しかも第三者の目が入ることを承知のうえで、
ネットに向かって
充足している自分を提示し続けるのか。

単純な考えかもしれないが、
何かに怯えているようにも見える。

とはいえ、
それを責める気にはならない。
むしろ、賢い生き方だと思う。
この環境で、
自分から首を差し出す必要はない。

本音を言えば、
僕だってああいうふうに、
一年中、胸を張っていたい。

最近、LINEのやり取りの中で、
ふと気づいたことがある。

顔立ちの整った人が、
毎回のように弱音ばかりを吐いていると、
思っている以上に気力を削られる。

弱さが似合わない人、
というのは確かに存在する。
それがたまになら構わない。
だが、連日のように続くと、
僕のような人間でも、
少し距離を取りたくなる。

やはり、
強気な人の方が、
見ているこちらも、
生きようとする力を
わずかに分けてもらえる。

……のだが。

あまりにも完璧な、
充実した日常の報告にも、
最近はどうにも飽きてきた。

ほんの一言でいい。
弱気な言葉を、
その人の口から
聞いてみたい気もする。

弱さに触れて、
少しだけ、安心してみたい。

まあ、
きっと言わないのだろう。
こちらを気遣うために、
自分の綻びを見せるような人ではない。

結局のところ、
強いとか弱いとか以前に、
ただ相性が合わない。
それだけの話なのだと思う。

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キーボードの余白、都市の断片


   LINEタイムラインという小さな窓に、
言葉を差し込むことはできる。
ただし、長居はできない。

最大1,000文字。
描写が少し続くだけで、すぐに溢れてしまう。
凝った文章には、あまり向いていない場所だ。

それは、波風を立てないための仕様なのだろう。
言葉が深く潜らず、
水面のあたりで静かに消えていくような設計。

スマートフォンの入力環境もずいぶん整い、
もうPCがなくても書ける時代になった。
指先だけで、だいたいのことは済んでしまう。

それでも、僕にとって
「書く」という行為は、
やはりPCのキーボードから始まる。

打鍵するたび、
都市の余白に音が落ちていくような感覚がある。

本当は、この文章も
LINEのタイムラインに流してしまおうかと思った。
けれど、更新が重なれば、
迷惑だと思われるかもしれない。

そう考えた瞬間、
長らく放置していたAmebaブログの存在が、
ふと頭をよぎった。

そして今日、静かに再開する。

乾いた都市の断片を拾い集めるように、
僕はまた、ここに言葉を置いていく。

キーボードの余白に、
音のしない文章を。

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8/13/2013

自撮りの海


   自撮りが多い知人に、少しうんざりしている。
見ているこちらまで、妙に気恥ずかしくなる。

Facebookには、そういう顔がやけに多い。
スクロールするたび、顔、顔、顔。
──このまま見続けたら、
嫌いになってしまいそうで、指を止める。

やっぱり、人は直接会っていたほうがいい。
顔を見ながら、
「あ、鼻毛出てるよ」
「おお、ありがとな」
男友達とは、そのくらいでちょうどいい。

女友達には、もう少しだけ柔らかく、
「ありがとね」と言えたら理想的だが、
そんな場面が来ないことくらい、
こちらもちゃんと知っている。

だからせめて、
ブログの中では、
少し距離を置いていたいと思う。

──さて。
スクロールでもするか。
今日も自撮りで満ちた海を。

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8/11/2013

背中が少し軽くなる昼


   今日、なんとなく。
紺屋町の路上で、女友達と
五ヶ月ぶりにばったり会った。

心の準備なしに人と遭遇するのは、
昔からあまり得意ではない。
こちらの都合などお構いなしに、
日常が割り込んでくる。

彼女とは、もう十五年ほどの付き合いになる。
長いといえば長いが、
関係性を説明するほどのものでもない。

その日はとにかく暑く、
僕たちは冷房を求めて
「イル・パパトーレ」に入った。

煮込みハンバーグのランチ。
スープ、サラダ、ライス、ドリンク、デザート。
昼には少し過剰なくらい、
きちんと揃ったセットだった。

「いただきます」よりも先に、
僕は最近の愚痴を話し始めてしまった。

女性をランチに誘っても、
断られることが多いこと。
もともと得意ではないが、
最近は自分が空気のように感じること。

言葉にしてから、
少し話しすぎたかもしれないと思った。

グラスの氷が、
かすかに音を立てたあと、
彼女は笑って言った。

「当たり前じゃん。
そんなこと言ってたら、距離置かれるでしょ」

余計な慰めはなかった。
正論だけが、すっと置かれた。

店を出ても、外の暑さは変わらない。
それでも歩き出すと、
背中がほんの少しだけ軽くなっていた。

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