現実逃避
現実逃避と、それに伴う優柔不断は、
どうやら性格というより、体質に近いらしい。
酒、タバコ、女。
どれも一時的には効くが、
決定打にはならない。
自分で決めるのが苦手だ。
できれば誰かに決めてほしい。
だが、そうされると、身体のどこかが落ち着かない。
「どこでもドアがあればいいのに」
ときどき、そんなことを口にする。
もちろん、あるわけがない。
だからこそ、その手の空想に逃げ込み、
どうにか均衡を保っている。
五月三日。
散歩の延長のような気分で出かけた名古屋で、
一人の女性が気になった。
特別な出来事があったわけではない。
むしろ向こうは、
こちらのことなど覚えていなかっただろう。
だからこそ、引っかかった。
数週間後、
確かな手がかりもないまま、
その人に会うためだけに、もう一度名古屋へ行った。
「それだけの理由」で移動したのは、
たぶん人生で初めてだった。
運よく、会えた。
写真より、少し可愛かった。
それから二週間、
毎日その写真を見ている。
胸が詰まるような瞬間はあるが、
不思議と心には余裕がある。
どうせ、簡単に会える距離ではない。
仮に何かが始まったとしても、
現実に引き戻されるだけだ。
だったら、このまま非現実でいい。
そう思う理屈を、
自分は丁寧に保管している。
その存在があるだけで、
明日も生きようと思える。
それは確かだ。
健全かと問われれば怪しいし、
正しいかと言われれば、首をかしげる。
情熱というには、
少し歪んでいる。
虚しくないのか。
間違っていないのか。
そう自分に問いかけながら、
六月九日の日曜日は終わった。
結局のところ、
そうやって自分の中で完結させてしまう。
たぶん、それも含めて、
変わらない性質なのだ。
ラベル: 長い文章

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