5/05/2013

女々しい話


   名古屋へ行った。
理由は、まあ、そういうことだ。

風俗放浪記、などと書くと
いかにも威勢がよさそうだが、
実際のところ、ここ一年、
僕は女とほとんど縁がなかった。

欲はもう霧のように散って、
手を伸ばしても、
指先には何も残らない。

今回は、名古屋に通い慣れた友人と一緒だ。
彼は、少し前までの僕にそっくりで、
迷いがなく、
行動がいちいち早い。

名駅から地下鉄に乗り、
降りた途端、彼はコンビニに吸い込まれた。
トイレかと思ったが違う。
書籍コーナーで、
決して安くはない情報誌を迷いなく手に取る。

誌面の中の女たちを、
彼は異様なほど真剣な目で見ていた。

やがて、
バッグからバックナンバーが出てくる。
「これを見て決めろ」
という無言の圧だ。
その必死さに、
僕は思わず目を逸らした。

ありがたいような、
面倒くさいような、
そんな気分でページをめくる。

だが、
どれだけ整った顔や、
露骨なポーズが並んでいても、
心は動かない。

虚しさだけが、
じわじわと増えていく。

昼は、彼の案内で中華料理屋に入った。
安くて、それなりにうまい。
ビールを飲み、
料理を分け合い、
とりあえず腹を満たす。

そのあと、
いくつか店を回った。

短い滞在もあれば、
少し腰を落ち着けた場所もあった。
値段は、正直、安くはない。

ある店では、
やけに明るく、
女たちも若く、
ここだけは、
ほんの一瞬、悪くなかった。

ただし、
それ以上でも、それ以下でもない。

最後に入った店は、
異様に暗かった。
目が慣れるまでに時間がかかり、
どうにも落ち着かない。

なぜこんなに暗いのか、
理由を考えたが、
途中でやめた。

考えるまでもないことだ。

店員の態度も気に障り、
延長する友人の横で、
僕はただ、
早く終わってくれと願っていた。

金を払って、
疲れるだけだった。

名古屋まで来て、
何をしているんだろう、
という気分になる。

楽しめなかったわけではない。
ただ、満たされたとも言えない。

帰り道、
続きを書こうと思ったが、
神経がすり減っていて、
どうにも、もう、
言葉を足す気にならなかった。

書くのが、
急に、
馬鹿馬鹿しくなった。

たぶん、
それが、
今の正直なところだ。

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