5/27/2013

腕毛と数珠と、スパイダーの午後


   麺スパ(メンズスパイダー)の
数珠ブレス付録──

その名を耳にした瞬間、
僕の中の何かが、ざわりと動いた。

数珠なのか、
麺なのか、
スパなのか。

意味が交差しすぎて、
どこにも渡れない交差点に
ひとり立ち尽くすようなアクセサリーだ。

正直、
恐れ多くてつけられないと思っていた。

それでも、つけてみた。
勇気というほど立派なものではなく、
好奇心に、ほんの少し押されただけだ。

結果は、
後悔というより、
笑撃だった。

我が腕毛。
無駄に毛深く、
無駄に自己主張が強い。

その毛が、
数珠の玉と玉の隙間から
顔を出すたびに、
腕に何か卑猥なものを
巻きつけているような錯覚が生まれる。

宗教と欲望の境界線が、
僕の前腕で、
かすかに揺れていた。

メンズスパイダーさん、すみません。
これは完全に、
僕の腕毛の問題です。

御社のデザインに
落ち度があるわけでは、
きっとありません。

ただ、もし可能であれば、
もう少しだけ、
毛に優しい設計というものを
ご検討いただけると、
僕のような毛深い民にも、
救いが訪れるかもしれません。

それにしても、
数珠ブレスをつけた瞬間、
なぜか自分が
「何かを悟った男」
みたいな顔になるのが不思議だった。

悟っていないのに。
何ひとつ、
わかっていないのに。

悟ったふりをする腕毛だけが、
やけに落ち着いている。

都市の午後。
コンビニのレジ前。

僕は、
何事もなかったかのように、
静かに数珠を外した。

そして思う。

この数珠、
麺スパって言うけれど、
本当にスパイシーだったのは、
僕の腕毛のほうだったのかもしれない。

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