5/22/2013

かぶき者の占い、都市の煙──名古屋行きは未定のまま


   明日のお昼まで無料──
そう聞いた瞬間、反射的に指が動いていた。

「戦後武将占い」─。

名前からして、すでに癖が強い。
歴女との雑談にでも使えそうなアプリだが、
僕はどちらかといえば、
史料を読み込むタイプより、
歴史を肴に笑うほうが好きな人間だ。

正確さよりも艶。
考証よりも、その場の匂い。

香炉の煙が、言葉の合間を漂うような、
そんな会話に落ち着きを覚える。

──で、土曜日。

もしかしたら、
また名古屋へ電撃的に向かうかもしれない。
理由はない。
あるのは、衝動だけだ。

財布の中身も、予定表の余白も、
とても旅立ちを肯定してくれる状態ではない。
それでも、行くかもしれない。

そういう男だったはずだ、前田慶次。
いや、ロクデナシというほど単純でもない。
少なくとも、退屈とは無縁だった。

占い結果は、「かぶき者・前田慶次」─。

──あなたは、自由を愛する都市の漂流者。
楽しさを求める本能に忠実で、
人との距離感に、ひそやかな敏感さを持つ。

──協調よりも静かな孤独を選び、
喧騒よりも、香り立つ余白に惹かれる。

──時に衝動的、時に無軌道。
しかしそれは、都市の構造に
身を預けきらないための、小さな美学の表れ。

──あなたの「かぶき」は、
誰かを驚かせるためのものではなく、
自分の輪郭を守るための、静かな舞。

……あまり当たっている気はしない。

自由奔放。楽しいことが好きで、
煩わしい空気からは、わりとすぐに距離を取る。

気まぐれで、金遣いは荒く、
後先を考えない夜も少なくない。

ロクデナシの見本帳みたいな男だ。

よろしく。
……いや、よろしくないに決まっている。

名古屋の夜。
遊女の幻影。
そして、戦後武将占いの画面を、黙って見つめる僕。

この土曜日も、
たぶん、まともには終わらない。

それでいい。

──よくないよ。

と、どこからか、
外野の声が飛んでくる。

煙はまだ、消えない。

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