3/24/2013

列車苦役 鑑賞メモ


   一言で言えば、
後味の悪い映画だった。

「あんたは恵まれている。
覗き見趣味で来る場所じゃない」

──たぶん、作者にそう言われるのだろう。
それでも、そう感じてしまった。

人生が、どこか似通っているからだ。
苦笑まじりに受け取るしかない。

そもそも、
小説原作の映画で
「これは傑作だ」と思えた経験が、
僕には一度もない。
頭の中で育てた映像とのズレが、
どうしても埋まらない。

今回も、例外ではなかった。

この映画を観るまでには、
少し時間がかかっている。

昨年の夏、
女性と映画を観る機会があった。
候補に挙がったのは
「苦役列車」と「ヘルター・スケルター」─。

結果的に選んだのは後者だった。
正直に言えば、
苦役よりも裸の沢尻を観たい、
というミーハーな判断だったし、
レディーファーストという
都合のいい言い訳もあった。

結果は、悪くなかった。
あの夏のひとときは、
ありきたりだが、楽しかった。

その反動もあってか、
今日になって、ようやく
独りで『苦役列車』をレンタルした。

郊外のレンタル店までママチャリで行き、
一枚だけ残っていたケースを、
妙に素早く手に取る。
万引きでもするような気分だった。

三日風呂に入っていない身体の酸味や、
散らかった部屋のことも、
そのときは気にならなかった。

……で、観た。

やはり、原作とは決定的に距離があった。

原作を読んでいない人に、
この映画を勧めるべきではないと思う。
不幸中の幸いは、
以前勧めてしまった相手が、
原作を読んでいたことだ。

この映画は、
ネオンの街に出ても、
独りでコップ酒をあおるような作品だ。
デート向きでは、決してない。

ただ、良い点もあった。

原作では好きになれなかった
日下部という人物が、
映画では妙に「いい奴」として描かれていた。
それを見て、
男の友達が欲しくなる自分に気づいた。

また、
映画版の貫太と、
過去の自分が重なる部分もあった。

他人との距離が測れず、
変に嫉妬し、
勝手に踏み込み、
勝手に傷つく。

それは、
過去に自分がやらかした失態と、
はっきり重なっていた。

SNSは、
現代のバーチャルなコンパだ。
距離感を誤る人間にとっては、
危うい場所でもある。

実際、僕はかつて、
mixiで空気の読めない振る舞いをして、
総スカンを食らったことがある。

だから思う。

この映画は、
「読むのは困難で、
吸うのは容易な空気」の危うさを、
容赦なく突きつけてくる。

過去の失態と、
今日この映画を観た行動。
その二つが重なったからこそ、
ここまで考えてしまったのだろう。

とにかく、
図々しい勇気で突っ走っていた
過去の自分に、献杯。

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