髪を少し削る日
このところ、七年前の自分の面影を追いかけていた。
中性的だった頃の輪郭を思い出しながら、
毎朝、剃刀で顔をつるつるにしていた。
けれど、どう考えても無理があった。
七年前には、戻れない。
左の耳の奥に、やけに主張の強い毛が生え、
鼻毛には白いものが混じり、
眉毛は、いつの間にか二センチを超えていた。
男性ホルモンという名の現実が、
いよいよ無視できない音量で話しかけてくる。
無精髭は一度やめていたが、また伸ばすことにした。
同時に、しばらく封印していた前髪も復活させた。
ぱっつん、と言うには少し照れがあるが、
要するに、若作りをやめるための若作りだ。
結果として出来上がったのは、
少し怪しい中年の顔だった。
清潔感よりも、居直りが前に出る。
否定はしない。
むしろ、狙ってそうした。
日曜の午後、
郊外の大型店でよく見かける人たちがいる。
妙に派手で、力の抜けた服装。
年齢とテンションが、どこか噛み合っていない。
正直、以前は距離を取りたかった側の人種だ。
だが、気づけば自分も、
年齢的には完全に同じ場所に立っている。
だったら、いっそ逃げない。
若く見せる努力より、
「今の自分」に似合う怪しさを選ぶ。
いつか、髪も白くなるだろう。
そのときは、そのときでいい。
全体的に白くなってからのほうが、
かえって正直かもしれない。
若ぶるのは、そろそろ終わりにする。
楽になる理由が、ようやく分かってきた。
ラベル: 長い文章

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