引きこもりの春、術後
背中にできた皮下腫瘍の摘出手術は、無事に終わった。
問題は、そのあとだった。
麻酔が切れると、鈍い痛みがじわじわと広がる。
ズキズキというより、逃げ場のない不快さ。
さすがに、酒でごまかせる類のものではない。
医者からは、当日は風呂に入らないようにと言われていた。
それ自体は大した制限でもない。
むしろ、面倒を一つ免除されたようで、
どこか気楽ですらあった。
ところが翌朝、目が覚めてみると事情は違った。
布団の中に、うっすらと残る酸味。
皮脂のにおい。
自分の体が、自分のものでなくなったような感覚。
幸い、家にはシャンプードレッサーがある。
頭だけは洗えた。
それで、多少は持ち直したが、
根本的な解決にはならない。
思い返せば、若い頃に入院したときなど、
何日も体を洗わなくても平気だった。
不快ではあっても、気にはならなかった。
それが今は違う。
この状態の自分を、誰にも見られたくないと思っている。
どうやら、年齢と一緒に、
妙なところに色気だけが戻ってきたらしい。
便利すぎる時代に、慣れてしまったのだと思う。
清潔であることが当たり前になり、
不便や我慢に耐える筋肉が、すっかり衰えている。
それを情けないと思う気持ちもある。
同時に、もう引き返せないのだとも分かっている。
手術跡をかばいながら、
今日は静かに引きこもる。
春は来ているが、
外に出る理由は、まだ見当たらない。
今夜は、早く眠ろう。
ラベル: 日記

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