3/23/2013

引きこもりの春、術後


   背中にできた皮下腫瘍の摘出手術は、無事に終わった。

問題は、そのあとだった。
麻酔が切れると、鈍い痛みがじわじわと広がる。
ズキズキというより、逃げ場のない不快さ。
さすがに、酒でごまかせる類のものではない。

医者からは、当日は風呂に入らないようにと言われていた。
それ自体は大した制限でもない。
むしろ、面倒を一つ免除されたようで、
どこか気楽ですらあった。

ところが翌朝、目が覚めてみると事情は違った。
布団の中に、うっすらと残る酸味。
皮脂のにおい。
自分の体が、自分のものでなくなったような感覚。

幸い、家にはシャンプードレッサーがある。
頭だけは洗えた。
それで、多少は持ち直したが、
根本的な解決にはならない。

思い返せば、若い頃に入院したときなど、
何日も体を洗わなくても平気だった。
不快ではあっても、気にはならなかった。

それが今は違う。
この状態の自分を、誰にも見られたくないと思っている。

どうやら、年齢と一緒に、
妙なところに色気だけが戻ってきたらしい。
便利すぎる時代に、慣れてしまったのだと思う。

清潔であることが当たり前になり、
不便や我慢に耐える筋肉が、すっかり衰えている。
それを情けないと思う気持ちもある。
同時に、もう引き返せないのだとも分かっている。

手術跡をかばいながら、
今日は静かに引きこもる。

春は来ているが、
外に出る理由は、まだ見当たらない。
今夜は、早く眠ろう。

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