恩は売らないブックオフ
よく見かける。
自分の愛読書を、何のためらいもなくネットに晒す人。
それが「文化的な共有」なのだとしたら、
どうにも僕は、その文化に馴染めない。
そもそも他人に、
自分の本棚のありようを見せることに、強い抵抗がある。
本棚とは、生活の断面であり、
もう少し正直に言えば、恥部に近い。
それを晒す潔さを、残念ながら僕は持ち合わせていない。
──が、しかし。
今日、気まぐれに目にした占いには、こう書いてあった。
「自己開示が幸運を呼ぶ」と。
ならば、試してみよう。
退屈な日常にも少し飽きていたし、
どうせなら、自虐も混ぜてみる。
1998年。
僕が愛読していた文庫本が、これだ。
「女がデキすぎて困ってしまう!
ネットナンパ完勝読本」
ノウハウ満載、体験ルポぎっしり。
双葉文庫は「面白文庫」──らしい。
……どうだ。
笑えないだろう。
実際、2013年の今となっては、
この本の内容はほとんど役に立たない。
ブックオフに持ち込んでも、買取はゼロ円だった。
完全にOFF。
あのブックオフが、である。
恩を売る気すら起きない。
そんな本。
つまりこの一冊は、社会的にも「無効化」されたわけだ。
もし、あの頃の僕のように、
何かを信じてしまいそうな20代がいるなら、
105円でもいい。
僕に、少し恩を売っておくといい。
あとで、何かいいことがあるかもしれない。
……と言い切れないところが、いかにも僕らしいが。
それでも、この本は、棚にある。
処分されず、役にも立たず、ただ残っているだけだ。
それだけで、
今のところは、十分なのだと思っている。
ラベル: 長い文章













