12/26/2012

アテローマの休日


   右の肩甲骨のあたりに、
いつの間にか腫れものができていた。
痛みはない。
ただ、たまに人に見つかって、
「それ、なに?」と聞かれる。

粉瘤腫。
アテローマとも呼ばれる、
良性の腫瘍らしい。
長く放っておくと、
まれに厄介なことになる、と医者は言った。

その頃の夏は、とにかく暑かった。
節電だなんだと言われていたが、
部屋の中は蒸し風呂みたいで、
エアコンの風も、頼りなかった。

僕はほとんど裸で暮らしていた。
ブリーフ一枚で、
家の中をうろうろしていた。
誰に見せるわけでもない体だ。

静岡の夏は、
もう南の島と大差ないんじゃないかと思う。
去年も、たぶん一昨年も、
同じことを考えていた。

その腫れに気づいたのは、
女友達だった。
「なんか、できてるよ」
自分では、ニキビみたいなものだと
勝手に決めていた。

当時の僕は、
それなりに自分の体を見ていた。
鏡の前に立って、
増えてきたシミや、
消えない痕を眺めていた。
だから、最初からあったとは思えない。

結局、それを三年放置した。
少しずつ大きくなって、
目立つようになり、
「病院に行きなよ」と言われる回数も増えた。

年末、
空気がやけに乾いて感じた日に、
ようやく皮膚科に行った。
気軽に、とはいかなかった。

診察室で、
医者はあっさり言った。
「取ったほうがいいね」

良性だとは言う。
ただし、切って、
調べてみないと、
はっきりしたことは分からない。

実は、これが初めてじゃない。
体の奥に、
時々こういうものができる。
もう慣れた、とは言えないが、
驚きもしなくなった。

自分では気づかないことを、
他人は案外、よく見ている。
僕は今日も、
暑さに負けて、
薄着のまま季節をやり過ごしている。

それが今のところ、
僕なりの
体との付き合い方らしい。

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