愛は傷つきやすく
夜の酒場が、どこかつまらなく
感じられるようになった。
たぶん、歌を一緒に歌えないからだ。
連絡先も、次の約束もいらない。
その場で、少し酔って、
懐メロをデュエットできれば、それで十分だった。
ただし、誰もが知っている曲は除く。
あまりに共有されすぎた歌には、
もう感情が乗らなかった。
マイクを握ったまま、
曲が始まるまでの数秒が、
いつも少し長く感じられた。
隣に立つ相手の息遣いだけが近く、
音楽は、まだ来なかった。
夜の店に通うようになって、
それなりの時間が経った。
ようやく、行かない自由を
選べるようになっただけの話だ。
帰り道、
使わなかった終電の時刻を
何度か見返した夜もある。
何も起きなかったことに、
ほっとしながら、
少しだけ取り残された気分にもなった。
情報はいくらでも手に入る。
だが、結局のところ、
距離感だけは
身銭を切らないと覚えられない。
愛は、たぶん、
そういうふうに
傷つきやすい。
ラベル: 好きな音楽




