7/25/2012

ひっそりしたエゴイズム


   SNSがどうこう、
ネットがどうこう、
そんな話をしたいわけじゃない。

ただ、
最近のタイムラインは、
他人の生活がやけに完成して見える。

わざわざ、ここで、
それを見せなくてもいいんじゃないか、
と思う瞬間がある。

公開メールみたいな会話。
内輪の温度。
それを眺めていると、
自分が悪いことをしている気がしてくる。

だから、見るだけにしている。
書かない。
混ざらない。

これはストレス発散で、
同時に、かなり汚らしい行為だと思っている。
自分のためだけの、
ひっそりしたエゴイズム。

人間なんかに、
生まれ変わりたくない。
正確には、
人間としてちゃんと振る舞うのが、
もう面倒くさい。

夕方のニュースで、
プラネタリウムの話題をやっていた。
夏休み。
家族。
星。
途中で、画面が白黒になった。
スプートニク2号。
犬。

説明はあった。
歴史的価値も。

でも、
そこで終わりにしていい話じゃない気がした。

誰も責めないし、
怒りもしない。
ただ、
後味だけが残る。
これを共有しようとは思わない。

リンクも貼らない。
読んだ人が何を感じるかも、
正直、どうでもいい。

買い物と、
前売り券と、
クーポン。
それくらいの距離で、
十分だ。
共感されなくてもいい。

むしろ、
されないほうが落ち着く。

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7/21/2012

行かなかった映画、行った映画


   映画の話を、先にしたのは僕だったと思う。
「一緒に映画を観に行こう」という言葉を、
最初に受け取ったのが僕だった。

作品は『テルマエ・ロマエ』だった。
内容よりも、誘い方が妙に現実的だった。

文字ではなく、
声で、少し距離のある耳元から届いた。
約束はした。
だが、実現しなかった。
仕事の都合が合わず、
上映期間はそのまま終わった。

行かなかった映画のことは、
思いのほか長く残った。
観ていないのに、
途中で止まったままのようだった。

しばらくして、
今度は僕のほうから声をかけた。
相手は別の人で、
映画も別だった。

「ヘルタースケルター」─。

一人で観るには少し重く、
誰かと並んで観るには、
ちょうどいいと思った。

今度は、実現した。
同じ時間に、同じ場所へ行き、
同じスクリーンを見た。

誘われた映画と、
誘って観た映画。
大きな違いはないはずなのに、
自分の中では、
わずかに重さが違っていた。
その差が何だったのかは、
今もはっきりしない。

ただ、
行けなかったあの一本が、
小さな序章だったかもしれない。

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7/09/2012

金の蔵Jr.、両替町に灯る


   7日、土曜日の夕刻。
まだ空に薄明かりの残る時間帯に、
静岡・両替町の一角で
「金の蔵Jr.」が店を開けた。

こうしたチェーン居酒屋の新店に、
つい足が向いてしまうのは、
地方都市で暮らす人間の習性のようなものだ。
 
都内ではすでに見慣れた
270円均一を売りにした店が、
ようやく静岡にも届き始めた。
それは流行というより、
街の呼吸が少し変わる兆しに近かった。
 
情報源は、いつものようにホットペッパー。
「オープン記念・5%オフ」という
控えめな文字を見つけ、
女子向け企画の多さに
わずかな居心地の悪さを覚えつつも、
きちんとクーポンを使った。

思えば静岡の夜は、
どこか常連であることを求めすぎる。
老舗の酒場や個人店の良さは確かにあるが、
一見でも、理由なく腰を下ろせる場所が、
もう少しあってもいい。
 
かつて「ちんどん」は、
その役割を担っていた。
軽やかで、それでいて芯のある店だった。
閉店のお知らせは、
今も街のどこかに空白を残している。
 
17時ちょうど。おそらくその日、
いちばん早く店に入った客は僕だった。

期待していた均一価格は、
すべての料理に適用されているわけではなく、
気まぐれに頼んだ皿は399円だったりする。

会計は、ほんの少しだけ背伸びをした数字になった。
それでも、悪くなかった。
むしろ印象に残った。

中でも気に入ったのが、
「つくね揚げちゃいました
with明太タルタル」という一品だ。
ふざけた名前に反して、
中身はきちんとしている。
明太子とタルタルの重なりに、
揚げたてのつくねの熱が絡み、
それだけで酒が進んだ。
タッチパネルの操作も快適だった。
三ツ星マートで
固いペン先と格闘してきた身としては、
それだけで時代が一歩進んだ気がした。
 
言語切替機能があるのも可笑しく、
意味もなく外国語表示にしてみたら、
注文のテンポまで
少し変わったような気がした。
 
ビールの銘柄だけは、
最後までよく分からなかった。
ロゴに見覚えはなく、
味は軽く、水のようだった。
何であれ、よく冷えていれば、
だいたい美味い。
 
このブログの更新も、
ずいぶん久しぶりになる。
長文は敬遠されがちだが、
飲んだ肴や、タッチパネルの感触について語るには、
やはりある程度の行数が要る。
 
言葉を並べているうちに、夜が少し整っていく。
そんな感覚が、まだ残っている。
 
酔いの余韻とともに、
文章を置いておきたい夜がある。
それだけで、十分だ。
 
近いうちに名古屋へ行く予定だ。
世界の山ちゃんで、手羽先の洗礼を
受けてこようと思っている。

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