モッズコートと精神の防波堤
3,980円のモッズコートを買った。
この冬は、もうこれでいいだろうと思った。
g.u.の棚の隅に、ぽつんと掛かっていた一着。
手に触れた瞬間、安物という先入観がすっと抜けて、
「まあ、これなら冬を越せるか」と胸の底が少し軽くなる。
シルエットは悪くない。
かつてのミリタリーの無骨さとは違い、
街の風景に自然と紛れる細身のラインがある。
肩の落ち方や裾の揺れ方も、
いまの自分に無理なく寄り添っていた。
惜しいのは、ファーだけだ。
軽くて、どこか人工的。
けれど、その軽さもまた、
自分の冬の暮らしに
妙に似合っている気がして、嫌いにはなれない。
中年の男がg.u.で服を選んでいる姿を見れば、
昔の景気のよかった人たちは眉をひそめるかもしれない。
笑われても、まあ、それはそれでいい。
そのくらいの余白が、まだ救いになっている。
身だしなみを投げ出した瞬間、
たぶん、自分も簡単にみっともなくなる。
だから、このコートを着る。
冬の風だけでなく、
気持ちの端を守るための、ささやかな防波堤として。
安価であることは、恥じゃない。
限られた中で、それでも少しは整えようとする。
その程度の矜持なら、まだ残っている。

<< ホーム