犬のいない夜
犬がいなくなってから、
生活のいくつかと、ものの見方が、
ほんの少しだけ変わった。
移動中の車窓から見える街並みにも、
自然と視線を向けるようになった。
外回り業務の途中で、かつて
犬と歩いた道を通る日もある。
そのたびに胸の奥が重くなり、
気づくと涙がこぼれていた。
泣くという行為も、
まるきり無意味なものではないのだと、
ようやく知る。
あの頃の自分は、
軽口と小さな欲望の中に沈んでいた。
いまはもう、そうしたものに
ほとんど心が動かない。
不思議なことに、
欲を手放した途端、
人は静かに寄ってくるものだ。
今なら、誰かの話に
少しは耳を澄ませられる気がする。
人生の巡り合わせとは、静かに皮肉だ。
理解を求めているわけでもない。
ただ、この夜にだけは、
記憶の片隅をそっと撫でてやりたくなる。
ラベル: 日記

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