10/12/2009

午後四時の空気――休日のリズムに耳をすませて


  2001年10月12日(金)

まるで絵の具をそのまま
流し込んだような空だった。

青にもいろいろあるけれど、
今日のそれは、見た瞬間に
いろんな雑念が洗い流されるような青。

天気予報では
「高気圧が張り出してます」
と言っていた。

たしかに、街全体の空気まで
少し軽くなっていた気がする。

昼休み、職場のおばさま方と
ひとしきりおしゃべり。

「こんな日に仕事なんて
もったいないよねぇ」

そんな言葉をきっかけに、
話題は自然と山とか川とか、
自然のほうへと流れていった。

そういえば春にも、
同じメンバーで日帰り旅行に行った。

電車に揺られて、河原でお弁当を広げて、
あとはお酒と笑いに任せるだけの一日。
よく晴れていたっけ。

人の記憶って、天気といっしょに
残っていることが多い。
そう思いながらふと空を見上げたけれど、
現実の空気は……けっこう油くさい。

職場のフロアは昼間でも薄暗く、
耳のそばでいつも何かがきしむ音がしている。
最近は、必要なことが聞き取りづらくなって、
どうでもいい話ばかりが耳に残る。
耳のせいなのか、それとも心のクセなのか。

気づけば、もう三年もこの空間にいる。
なんとなく、部屋のすみにほこりみたいに
空気の重たさがたまっているのを感じる。
それに気づいたのは、たぶん最近のことだ。

だから休日くらいは、
無理にでも違う空気を吸いたくなる。

好きな香りをつけて、
いつもと違う音楽を流して、
少しだけ身なりを整える。

たったそれだけで、
人はけっこうリセットできる。

とはいえ、今週はずっとパソコンの前だった。
古いデスクトップで
日記を書き続けていたけれど、
その不格好な機械の中に、
なんだか自分を見ているようで、ちょっと笑えた。

今、家にはパソコンが4台ある。
多いなと思うけれど、どれも手放せない。

どれも少しずつ、
自分の分身みたいな気がするから。

仕事帰りに、なんとなく家電量販店へ寄って、
CD-Rを買った。何を焼く予定もないのに。
でも、そういう無意味な買い物って、
案外いちばんいい気晴らしになる。

もう一つだけ書いておこう。
趣味に夢中になるのもいいけれど、
見た目やふるまいにも少し気を使いたい。
明日は久しぶりに服でも見に行こうかな。

最近、流行のアイテムもちらほら聞くけど、
どうもピンと来ない。
古くても、自分にしっくりくるものがいい。
ただ、それがどこに売ってるのかが問題だ。

昔好きだったブランドは、
どこも値段が高くなっていて、
気持ちだけが取り残された感じ。
そんなことを考えながら、
ベッドにもぐりこむ。

「予定は未定か」

とつぶやいて、目を閉じた。


そして今──2009年の僕より。

あの頃は、服装に関しては本当に無頓着だった。
今は少しだけ、マシになった気がしている。
気がするだけかもしれないけれど。

今日は8年前と似たような晴れ日で、
しかも連休の最終日。
正確には、ちょっとした有給休暇を
組み合わせた4連休だったので、
体も心もいつもよりきちんと整った。

午後になると、たいてい
昼寝をしていた。その習慣も悪くない。

この数日間、誰とも会っていない。
無理に会おうともしなかった。
一人でいる時間が、自分にとっては
案外贅沢なのだと、
年々思うようになってきた。

職場の方に「誕生日会をしよう」と
誘われていたが、いろんな事情を
理由にお断りした。

正直なところ、夜の外出が
ちょっと苦手になってきたのだ。
眠りのリズムを崩すのが怖いというか──
まあ、若くはないということかもしれない。

午前中は母と一緒に、
近所の家電店まで徒歩で出かけた。
風は少し強かったが、歩いているうちに
体が温まり、万歩計を見ると
ちょうど4000歩。
この歩数に、妙に納得した。

店ではプリンタのインクを買い、
調理家電をひと通り見て歩いた。

こういう時間が、自分にとっての
外出のちょうどいい形になっている。

ふと思い出すと、以前よく通っていた
店はもう近所にはなくなっていた。

この店の別の店舗に行くには、
いまや電車で30分。
変わるもの、変わらないもの。

その中で、自分はどこを選ぶのか──
そんなことを考える午後も、悪くない。

以上。

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