ホストペットクラブ ──限定解除と下ネタの青春記
……あらためて読み返すと、笑ってしまう。
けれど、あの頃の僕が
「残しておこう」と思ったのなら、
それで十分だと思う。
2001年9月18日(火)
「日記って、むずかしい」
日記を書こうと思っても、
書くことが浮かばない。
机の横を見渡せば、亀田製菓の柿の種。
……そして下半身に抱えた『愛の種』。
そんなくだらないフレーズを思いついて、
数日前、ポストペットの彼女に送ってしまった。
返ってきた返事には
「ボコボコに殴られた」とあった。
どうやら柿の種と
愛の種の対比が、見事にスベったらしい。
今日も暑かった。
上司がグアム旅行から無事帰国。
9月11日のテロ直後で心配されたが、
土産にナッツ2袋と
タバコ1カートンを抱えて戻ってきた。
その海外仕様のタバコには、こんな注意書きがあった。
「あなたの貞操観念を損なう
おそれがありますので、やりすぎに注意しましょう」
苦笑するしかなかったが、ネタにはなった。
人が無事に帰ってくる――
それだけでありがたいことだ。
2001年9月19日(水)
「水曜という名の真ん中」
「まんなかもっこり夕焼けニャンニャン」
――そんなフレーズがあったらしい。
僕には馴染みがないが、耳に残る響きだ。
仕事は3年目。すっかり慣れて刺激は薄い。
「石の上にも三年」と
祖父の口癖を思い出しながら、
もう少し踏ん張ろうと思う。
帰りにベスパに給油。
ガス代も安く、気軽に走れるのがありがたい。
本屋では『アサヒカメラ』を立ち読みしつつ、
隣の棚の工口本ものぞいてしまう。青い。
夜は「ハモネプ」を眺めた。
共通の趣味でつながる人たちが、羨ましく映った。
2009年の追記
振り返ると、なんとも幼い。
下ネタに逃げる言葉も、
空虚さも、若さの証拠だ。
ポストペットの相手は
誰だったのか、もう思い出せない。
いまは、軽々しくメールを送る気力すらなくなった。
人付き合いは、年を重ねるほど慎重になる。
ただ一つ、誇れるものは残っている。
バイクの免許だ。
あの頃の大型二輪は「限定解除」と呼ばれ、
試験場での実地試験しかなかった。
発表されたコースをひたすら歩いて
頭に叩き込み、軍隊のような空気の中で挑む。
僕は4回目でようやく合格。
その時の安堵感は、言葉にできない。
試験場で見知らぬ人と抱き合い、握手を交わしたあの瞬間。
まるで全国大会に優勝したみたいに誇らしかった。
バイクはSR500やスポーツスター883を経て、
最後はベスパPX200FLに落ち着いた。
『探偵物語』の松田優作が乗っていた
ベスパに似ていて、どこか気取った気分だった。
当時は乗馬用のヘルメットをかぶり、
意気揚々と走った。
東京の雑誌ではサマになるスタイルでも、
地元静岡では警察に止められたのも今では笑い話だ。
タバコはその年の暮れにやめた。
今でもたまに一本もらって
火をつけることはあるが、不味くて気持ち悪い。
酒もやめた。飲むなら外で、誰かと一緒に。
そう決めてから3ヶ月が過ぎた。
「生きることは汚れること」と誰かが言った。
せめて肺だけは、きれいに保っていたいと思う。
……少し自慢っぽく書いたけれど、
実際にはただの昔話を膨らませただけ。
陰気な僕にとって、語れることなんて、
それくらいしかなかったんだ。
おやすみ野菜。
ラベル: 再掲載「赤い日記帳」




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