序章──moreっと毛玉(けだま)
2006年の8月、夏の夜更け。
友人のTと僕は、街外れの漫画喫茶に身を寄せていた。
冷房のきいた薄暗い個室で、
気まぐれにFC2のIDを取得し、
その流れのままにブログの名まで決めてしまった。
タイトルは「moreっと毛玉(けだま)」──
深い意味はない。
けれど、声に出したときの
響きがどこか柔らかくて、
僕らの交換日記に似合うと、
ふたりでうなずいた。
このブログは、僕──
「読みにくいアヒルの子」と、
もうひとりの書き手
友人Tこと「ainame」とで綴っていく。
ひとつ屋根の下ではなく、
インターネットの片隅に置かれた、
小さな共同机のような場所だ。
それまで僕らはmixiに日記を綴っていた。
けれど、あの賑やかなざわめきから、
少し距離を置きたくなった。
もっと静かで、呼吸の
やわらかなやりとりができる場所──
郊外のベンチのように、
ただ腰を下ろして風に
吹かれるための小部屋がほしかった。
まだ始まったばかりで、
どんな姿になるのかはわからない。
けれど写真が、この場所の
軸になるだろうという予感はあった。
その最初の実験として掲げておきたいのは、
昨日の夕食の記録だ。
深夜に漫画喫茶へ向かう前、
街角でTと僕が並んでかぶりついた、あの味。
夢中になって、気づけば笑っていた。
大げさに言えば「熱中」であり、
いま風に言えば「ハマっている」─
──それが、モスチーズバーガーだった。
ラベル: 序章, 読みにくいアヒルの子執筆

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